靴の豆知識voice
夏の船に必須の靴は?

昔、船の好きな歌手がお嫁さんを探している時の条件は船に合っていることだったそうです。そして、その人は船に遊びに来た大勢の人の中で、1番船の中で飄々と歩いていた女性を奥さんにしました。夏はクルージングヨットやモータークルーザーを持っている人にクルージングに誘われたり、会社の福利厚生施設のクルージングボートに乗る機会も多くなります。船にあった靴を履いて行けば、素敵なチャンスがあるかもしれません。
エスパドリーユとデッキシューズ
夏のリゾートシューズといえばエスパドリーユとデッキシューズに2分されます。
エスパドリーはフランス起源の靴で、靴底が編んだ麻で作られていて上の部分がキャンバス地で出来ています。
リゾートや避暑地で主に履かれるので、デザインもおしゃれなものが多く、マリンファッションにも非常によく似合います。
一方、デッキシューズはゴム底が基本で上の部分はキャンバス地か柔らかい革で出来ています。
海辺のリゾートならどちらの靴も似合いますが裸足で履くならばエスパドリーユの方が気持ちがいいと思います。
しかし、ヨットハーバーでクルーザーに乗るときはデッキシューズに軍配が上がります。
船でデッキシューズを履く2つの理由
船でデッキシューズを履くには2つの理由があります。
1番目の理由はデッキシューズを履いている人が濡れたデッキの上で滑らないように守ることです。
業務用のフェリーボートなどは乗客の通路にゴムシートが敷いてあったり、床がザラザラに仕上げてあるのでサンダルやそれこそ革靴でも滑りません。
しかし、オシャレなクルーザーには無粋なゴムシートなど敷いていません。
それどころか、必要最低限の部分以外はピカピカに磨きあげていたり、チークの床にもニスやオイル塗ってあったりするので、波に洗われて濡れるとゴム足のデッキシューズ以外では滑ってしまい、歩くどころか立っていることもできなくなります。
また、歩く部分もピカピカになっているようなクルーザーに革靴などで乗り込むと床を傷つけてしまう恐れがあります。
特に靴底に金具を打っている靴やハイヒールは間違いなく床を傷つけるので、船の人たちには嫌われてしまいます。
濡れた甲板でもすべらないスペリーソール
デッキシューズにもいろいろなものがありますが、定番といえるものはトップサイダーのスペリーソールです。
デッキシューズの靴底はゴムでできていますが、たとえゴム底であっても真っ平らなゴムでは濡れた床の上でひとたまりもなく滑ってしまいます。
これを何とかしようと考えられたスペリーソールは、ゴムにカミソリで引いたような細かい溝をたくさん作ることですべらないしようにしたものです。
このアイデアは開発者のスペリーが自分の愛犬が凍った道の上を滑らずに歩くのを見て、愛犬の肉球を観察してヒントにしたものです。
このスペリーソールはアメリカの海軍学校で採用されたため、瞬く間に有名になりデッキシューズといえばトップサイダー、トップサイダーのデッキシューズといえばスペリーソールと言われるまになりました。
国産のメーカーもOK
今でもトップサイダーのデッキシューズはスタンダードですが、国産メーカーからも多くのデッキシューズが発売されています。
靴底のゴムの溝の形状こそ違うものの、ゴムの材質などを改良することで本家トップサイダーと渡り合える商品も多くなっています。
月星のデッキシューズなどは、愛用者も多く価格も手頃なので、夏の海行き靴として一足用意しておきたいものです。